Interview: Yvan Arpa-The Brilliant Mind Who Gave Birth To ArtyA  <PART2>

WIVER MAGAZINE 2015年11月27日

article & photo 岸由利子

 
時計産業の中心地・スイスには、現在、約800の時計ブランドが存在する。100年、200年以上の歴史を持つ老舗ブランドから、近年立ち上がったブランドまでさまざまにあるが、ずば抜けたクリエイティビティと実力を余すことなく世界にぶっ放しているのが、ArtyAだ。
 
東京展示会開催に併せて、来日したアルパ氏に、ユニークな美学をはじめ、クリエイションのこと、人生のことに至るまで、じっくりお話を伺ってきた。
 

Yvan Arpa

©Yuriko Kishi


 
 ―これまでの軌跡についてお聞かせください。数学の教授としてキャリアをスタートされたそうですが、その経験が現在のアルパさんに生かされていることはありますか?
 
正確な質問に対して、正確な答えを導き出す。知っての通り、それが数学の世界における式図ですが、いつも自分が正しいということが分かるという意味では、とてもリラックスできますし、私にとっては、ファンタスティックな学問です。
 
ただ、人生はそういうものではありません。導き出したひとつの答え通りにはいきませんし、いつだって、その枠を越えていかなくてはいけない。
でも、私は思います。時に厳しく、難解なことがあったとしても、自分が考えたように自由に行動して、回り道になろうと、どんどん冒険したほうが、結果的には、何万倍も、面白く、豊かで、ワイルドな人生になるのだと。
 
―ArtyAのクリエイションについては、どうでしょう?
 
例えば、何か新しい製品を作る時、数学の世界でするのと同じように、仮説を立てて、解決策を見出していきます。
もし、仮説が正しければ、製品も正しいが、正しくなければ、製品も同様になるというように、数学とクリエイションは全く別のものかもしれないけれど、私の場合、答え=製品を導き出すロジカルな過程は、似ているかもしれません。
 
ArtyA Microcosmos Tourbillon

©Yuriko Kishi


 
ただ、他のブランドをプロデュースする時と、自分のブランドにおけるクリエイションでは、大きく異なる点がひとつあります。
前者の場合、関わるスタッフの数が膨大だったり、予算など、いかんともしがたい制約があるのが常ですから、プロジェクトを遂行したり、製品を作り上げるためには、何らかのルールを作らなくてはなりません。
制約があるという意味で、私はこれをプリズンのルールと呼んでいます。
一方、ArtyAは、自分がやりたいことを100%やるために作ったブランドですので、プリズンでもなければ、ルールもありません。
このブランドのDNAはクリエイティビティ、情熱、そして、幸せです。
 
例えば、上記のような、時計のボックスを作ったり、もし、日本のブラザーと“サムライ・ウォッチ”を作りたいという話になれば、今すぐにだって着手できます。
800ものブランドがスイスに存在する中、「もし新しいブランドを立ち上げるなら…」と考えた時、仮に、200年前の歴史あるブランドの手法やスタイルを真似て、素晴らしい時計が生み出させたとしても、それはあくまで二番煎じでしかありませんし、
誰かの模倣になるならば、やる意味も感じません。私は、すべてにおいて、新しい道を拓きたかったのです。
 
ArtyA Guitar Watch Iron Master

©ArtyA


ArtyA Farfalla Set

©ArtyA


 
 ―独自の美学を貫き、確固たるスタイルを確立しているからこそ、アーノルド・シュワルツネッガー、マイク・タイソン、KISS、スティーブン・セガールなど、唯一無二の個性を放つセレブリティたちを惹きつけるのでしょうね。
 
実は、「ArtyAの時計をぜひ、この人に着けて欲しい」と気に入ったアーティストや著名人がいても、自分からアプローチすることはありません。なぜなら、私は弱いからです。
これまでお話してきたことを踏まえると、矛盾しているように思うかもしれませんが、本当です。彼らは、自ら私を探して、コンタクトしてきてくれて、私の時計を喜んで買ってくれました。
 
スイスをはじめ、ロシア、メキシコ、日本など、世界各地に、ArtyAの時計を愛してくれる人たちが増えて、嬉しく思います。
彼らとじかに接してみて思うのは、コンセプトや背景にあるストーリーなど、より深いところまで、ブランドを理解したうえで、愛してくれているということ。
ただ単に、世の中で名前が知られているから、みんなが付けているから、という表層的な意味合いで、時計を選んでいないのです。
“自分が好きなものを買い、自分の好きなことをする”というのが、私のモットーでもあるので、同じ価値観を共有できていることを誇りに思います。
 
Yvan Arpa

©Yuriko Kishi


 
 ―“Son of Gun”、“Son of Art”、“Son of Earth”など、ArtyAには、目を奪われる魅力的なコレクションがそろっています。ご自身で、特にお気に入りのピースがあれば、教えていただけますか?
 
できれば見せたいのですが、残念ながら、今、私の頭の中で、絶賛開発中なので、今回は見せられないんです。
それ以外にも、具現化したいアイデアはたくさんあって、アトリエには、常時、1000種類以上の製作中の時計が並んでいます。それらの2~3つの時計に、同時に取り掛かかる毎日を過ごしていますね。
今、興味があることのひとつに“サムライ”があります。5歳の頃から、ジュネーブの空手道場に通い、日本の武士道精神を学んできましたが、今後、さまざまな活動やクリエイションを通して、サムライ種族を世界に向けて、再活性化させたいと構想中です。
 

<PART1>を見る